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躑躅の話

たなきんです。いつものように長文です。

京都は桜の季節も終わり、新緑が眩しく時には汗ばむほどの今日この頃ですが、皆様いかがお過ごしのことでしょうか。

今の季節は、宇治平等院や大沢池畔にある平安郷の藤、永観堂や東福寺の青もみじが眩しく、八瀬の瑠璃光院の新緑も欠かせません。また、衰えたとはいえ妙心寺塔頭大心院の霧島躑躅、三室戸寺の山の斜面に咲き競う多くの品種、そして蹴上浄水場も忘れてはいけません。また、長岡天神の霧島ツツジは非常に色濃い花が一斉に開き、その写真を眺めると全部が写真編集ソフトのPhotoshopで色彩を濃い目にいじっているのではないかと疑うような真っ赤な花に毎回驚きます。

長岡天神といえば参道の両側に広がる八条ヶ池に面して竹の子尽くしの料理店「錦水亭」があって、池上に浮かんだ離れで楽しむコースは、その朝に採れた筍を使い、木の芽和えにはじまり、寿司、造り(刺身)、吸物、煮物、焼物、蒸物、油物、酢の物、竹の子御飯とこれでもかこれでもかとタケノコばかりで考えた方の執念を思うと笑みが溢れたことを思いだしました。ピークの季節になると長岡駅から長岡天神に向かう道端で新聞紙で包んだ筍を何人ものおじさんが売っている姿もございました。おじさんの足元にゴロリと筍が転がっていて、売り込みの声も出さず寡黙なままなのですが、「見ればわかるだろ」の気持ちが伝わります。当時は値札などという無粋なものもなく、売り手と買い手の阿吽の気持ちでお値段が決まっていたのかも知れません。今から思い起こすと、あのおじさんたちのタケノコは一体どなたがお求めになるのでしょうか。観光客ではなく地元の一般の方なのでしょうか。あの竹の子尽くしを食べた時期は、つつじが散り紫陽花の咲く頃だったでしょうか。

花の話を書き始めながらどうしても食の話に逸れてしまう餓鬼道に落ちた筆者をお笑い下さい。いつもは餃子の王将や新福菜館で糊口をしのぐお寺巡りですが、身の程知らずにもたまには清水の舞台から飛び降りる贅沢もしております。三嶋亭なんか大学時代の思い出に入ってみてそれ以来行ったことがありません。一緒に行った札幌の的場さん、元気にされとりますか?はい、寺町京極の「キムラ」には何回か参りました。

さて、本論に戻ります。話は智積院の庭園です。曰く因縁故事来歴はウエブサイトに任せるとして、今と同じ季節に智積院を参詣し、庭園も入場料を支払って拝見したのです。その入場券には築山の斜面に植えられたツツジの写真が見事で、説明にもツツジ自慢がございました。サイトを引用すると「複雑な山の形をかたどっているように見え、さらに滝流れとその下流の護岸石組の存在が深山幽谷の雰囲気をかもし出しています。また、春にはサツキツツジの花が、(一部略)庭の趣に華やかさを添えます。」とあります。

また、「築山の刈り込みは、丸く刈り込んだものや四角く刈り込んだものが組み合わされ、さらに築山裾には三味線の「ばち」のよう形をした刈り込みもあり、それだけでも目を楽しませます。このように様々な形の刈り込みを配植するという珍しい構成を持っていますが、江戸時代の絵図を見ると、池に架けられた石橋なども含めて、今見るものとほぼ同じ情景が描かれており、その姿にほとんど変化が無いことがわかります。」ともあります。

さて、東西古今の文化の潮に揉まれながら、東亜の大島国に生きる真理の探求者たる私は入場券の写真と同じツツジの植込みを探し求めたのであります。ほら、広隆寺の阿弥陀如来像を観て、「あ、写真と同じだ。」と安心する気持ち、わかるでしょう。また、孔子様も「学びて(知識を得て)時にこれを習う(実体験する)、またよろこばしからずや」と論語でお解きになられています。目を皿のようにして植込みを睨んでいると斜面の凹凸や庭石の配置からようやく入場券の写真の場所が特定できたのでありますが、ツツジの植込みは全く異なるものでありました。昔の写真より育ったというのであればしぶしぶ納得もしたいのですが、ゲンブツのツツジはかなり刈り込まれていました。

京都の寺社仏閣の庭園を担当されるある庭師の談によると、樹木は大きくなるが昔と殆ど違わないように形を維持することが仕事なのだとのこと。また、左京区の蓮華寺のお庭を愛でていると、お寺の方が東の方向を指差して、あの木が伸びる前は比叡山が借景だったと残念そうにお話されていたことも思い出しました。

「年年歳歳花相似たり」という唐詩選の歌は本邦においても人口に膾炙しているが、実は「花」さえも歳月風雨と寿命によって同じではないことを私は東山真言宗智山派智積院のお庭で悟ったのである。

なお、前述の「妙法寺塔頭大心院」方丈裏にある霧島躑躅は樹齢が三百八十年余りと言われており、新緑の中で鮮やかな赤の花が見事であるが、最近は樹齢が衰えてきているということなので、ご覧になるのであればすぐに新幹線に飛び乗って上洛されることをお勧めする。蛇足だが、この躑躅が植えられた翌年に鎖国令が出たという。

タナキン

北山ユース開所366日目から宿泊して、皆さまに育てられた大昔のホステラーです。 京都の寺社仏閣の全数踏破を終え、次に季節毎の拝観を実施中。

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