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鴨川食堂

いつもより長文です。

京都を逍遥徘徊独歩して半世紀近くともなりますと、寺社仏閣高楼庭園名所旧跡だけでなく、あそこの路地こちらの抜道、そして美味いものにも少しは口に含み、イッパシの京都通を気取るようにもなるのは人のサガでもありましょうか。

さらに、京都通の名前を磨くためには、京都に関する図書の濫読、ウエブサイトの閲覧、博物館の京都展や百貨店の京都老舗展に参じ、「京都」の名がついたテレビ番組の題名を発見しては録画ボタンを押しているのであります。

さて、テレビ番組はYahooの番組サイトへ行き、「京都」のキイワードで検索すると毎週どこかの局で京都を題材とした番組を見つけることができます。番組は玉石混淆、 魚目混珠、種々雑多あり、中には一度観て、もう絶対次は観るものかという酷い番組もございますが、最近は歌舞伎俳優の中村芝翫がホストとなっているBSテレビ朝日系の「京都ぶらり歴史探訪」が気に入っております。

ある日のこと、テレビ番組の検索で出てきたのは「鴨川食堂」というドラマでした。食堂の主人公を演じたショーケンこと萩原健一がこの3月に亡くなったことから過去の番組の再放送を日本放送協会が企画したようであります。ショーケンは昭和51年に放映された「前略、おふくろ様」や「傷だらけの天使」で有名ですが、平成二十八年一月から放映されたこの番組が最後のドラマと思われ、いいアジを出しています。

この鴨川というのは、京都が舞台であるのに川の名前ではなく主人公の親子の苗字であることに作者の諧謔を感じますが、元刑事で抜群の料理の腕を持つ鴨川流をショーケンが演じ、その娘役を忽那汐里が演じます。親子が営む食堂に毎回ゲストが「思い出の食事」を求めてやってきて、閉店してしまったトンカツ屋のトンカツや、廃業して三十年にもなる旅館の鯖寿司、大学生である依頼主が五歳の時に食べたスパゲティーなどを、元刑事の主人公が聴込み調査や巧みな推理で見事に再現するのであります。

ところが、鴨川食堂は看板や暖簾も出さず普段は常連客だけを相手に営業しており、「食事春秋」というグルメ雑誌に「思い出の食、捜します。鴨川食堂」という一行の広告を出すだけで、店の場所や連絡先も告知していないのですが、のっぴきならない理由がある依頼主だけが雑誌の編集部に電話をして京都まで訪ねてやってくるという筋立てになっているのであります。そして思い出の料理の裏側にある人生の機微や愛憎が滲み出てくるのがこのドラマの特徴なのであります。

まず、依頼主が初めて食堂に足を踏み入れると出される「おまかせ」の食事のメニューに頰が緩んでくるのであります。少し長いのですが、第一話「鍋焼きうどん」から数々のお皿を引用してみましょう。

以下、引用

あらめとおあげの炊いたん、おからのコロッケ。菊菜の白和え。イワシの鞍馬煮。ひろうす。京番茶で煮た豚バラ。生湯葉の梅肉和え。それに硬めに炊いた江州米と海老芋の味噌汁。

以上、引用終わり

また、第二話「ビーフシチュー」には松花堂弁当が出て参ります。

以下、引用

一応松花堂の内容を説明させてもらいますと、十字に仕切った右上は口取り、八寸みたいなもんです。細々入れさせてもらってます。右下は焼もん、今日は寒ブリの照り焼きです。左上はお造りと酢のもん、明石の鯛と赤身は紀州のマグロ、唐津のアワビはさっと火を通してあります。宮島の穴子を炙って、胡瓜とみょうがで酢の物にしてます。左の下は松茸ご飯。信州産ですけど、ええ香りしてます。後で吸い物を持ってきます

グジと蟹身の椀です。寒くなりましたさかいに、葛をひいて、みぞれ仕立てにしました。

以上、引用

如何でしょうか。料理の一つ一つが京都のどこかで頂いた記憶があり(流石にアワビは食べてませんけど)、ニンマリとしてしまうのであります。松花堂弁当などは、清水の舞台から飛び降りたつもりで、桜の季節に大丸百貨店に予約を入れて某高級店のお弁当をその百貨店の裏にある御射山公園の桜の下で食べた記憶が蘇ってくるのであります。(この公園は祇園祭で北山OBが集合する京都市男女共同参画センターの南に面した小公園です)

なお、食事に興味の薄い方には申し訳ないので、ここらで次の話題に転じます。京都の地名がふんだんに出てくるのは京都マニアにはたまらないのではないでしょうか。

以下、引用

十念寺のそばに住んどる。毎朝、加茂川を歩いて出町柳まで行って、そこから京阪や。

今やったら出町柳まで直通電車が走ってますけど、当時はありませんでしたさかい、京阪三条から鴨川堤を散歩しながら北に向こうたんですやろな

以上、引用

この「鴨川食堂」は少し前に「おひとり京都の愉しみ」や「京都の定番」という京都のガイドブックを著した柏井壽氏の小説デビュー作で評判がよかったのか、「鴨川食堂おかわり」「鴨川食堂はんなり」と続編が小学館から文庫で出ており、この一作目と二作目を題材にNHKは八話のドラマに仕上げております。

文庫本を読むのも宜しいと思いますが、テレビドラマもよくできておりますので、是非とも録画予約してお楽しみ下さい。放映はNHK BSプレミアム(103ch)土曜16時〜16時50分です。また、見逃したらNHKオンデマンドでもお楽しみ頂けます。(NHKオンデマンドは無料です。)なんだか最後はNHKの宣伝くさくなってしまいました。

追記:「京都ぶらり歴史探訪」はBS朝日系列で、火曜19時からですが毎週ではありません。

 

タナキン

北山ユース開所366日目から宿泊して、皆さまに育てられた大昔のホステラーです。 京都の寺社仏閣の全数踏破を終え、次に季節毎の拝観を実施中。

2件のコメント

  1. 鴨川食堂の六作目となる「鴨川食堂まんぷく」が8月11日に発刊されましたので、ご興味のある方はどうぞお近くの本屋さんへお急ぎください。

    第一話の出だしは、リムジンバスを八条口で降りて京都駅の線路を潜り件の食堂へ向かう道筋を描写していますが、京都に詳しい方ならその景色が浮かぶと思います。

     

  2. 鴨川食堂の八作目となる「鴨川食堂ごちそう」が2021年6月7日に発刊されますので、ご興味のある方はどうぞお近くの本屋さんでお買い求めください。

    なお、AmazonのKindle版も文庫本と同じ価格でお買い求めになれます。Kindle端末がなくてもスマホ、タブレット、PCでもご覧いただくことができます。

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