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和菓子の話

たなきんです。いつものように長文です。

神奈川の私鉄沿線の某駅前でおじさん一人でやっていた「うさぎや」という和菓子店が廃業してもう何年になるだろうか。今の季節なら、涼しげな透明ゼリーの中に小倉餡で作った鮎が泳ぐお菓子「鮎流し」やどら焼きを細身にして目と口を付け、餡の中に求肥を入れた「鮎」も思い出すのだ。また、隣の駅にあった「亀屋万年堂」ならぬ「鶴屋千年堂」は、お菓子のホームラン王の「亀屋万年堂」の一番弟子が開いた店であったが、二十世紀末に火事を出してブーランジェリーに変わってしまった。

それはさておき、電話帳「タウンページ」のデータベースによると、2006年に14,674軒あった和菓子の登録店舗数は2015年は11.442軒に減っている。ちなみに全国和菓子協会の会員数は約二千名、「虎屋」が名誉会長で、会長が榮太郎、副会長は白松がモナカ、にしき堂などが並んでいるが、軒数のデータは公開されていない。つまり入手できるデータは、上述した2015年のものしかないが、2020年には八千軒を割っているのではないか。

さて、それでも京都の街を歩くと和菓子屋さんがとても多いことに気が付くだろう。数多の寺社仏閣に加えて裏・表・武者小路という三千家や藪内流、遠州流、石州流など茶道家元本家や道場もあることから和菓子の需要はさぞ多かろうと思われるのである。なお、「八ツ橋」、「おたべ」や「阿闍梨餅」の観光客を相手にした和菓子屋は別に考えたい。

これも2015年の情報で恐縮だが、人口10万人当たりの件数では、京都府は25.02件。逆算すると人口四千人に1軒という密度である。(「件」と「軒」は使い分けている)

日本最古の和菓子屋は、北山ユースホステルのホステラー御用達のあぶり餅「一文字屋和輔 一和」であり、西暦1000年から続いているというが、その話は別の機会に触れたい。そして、最古の和菓子屋は「一和」であるが、最古の和菓子は奈良時代から伝わっていることをご存知だろうか。あぶり餅より200年くらい歴史が長いそのお菓子は八坂神社の門前で販売されているのである。名前は「清浄歓喜団」と呼ばれ、唐から伝来し日本で唯一「亀屋清永」でのみ製造されているのを以前に買って食べてみた。

この店のウエブサイトから引用すると「「清め」の意味を持つ7種類のお香を練り込んだ「こし餡」を、米粉と小麦粉で作った生地で金袋型に包み、八葉の蓮華を表す八つの結びで閉じて、上質な胡麻油で揚げてあります。」とある。

https://kameyakiyonaga.co.jp/year01.html#year01-01-01

手のひらに載る大きさだが縄文土器のような形で、皮が非常に硬く、歯が立たない。ハンカチで包んで硬いもので叩くしかない。お味は、生憎忘れた。何しろ半世紀近く京都を徘徊して食べ歩いているので、忘却の彼方に去ってしまった食べ物はたくさんある。繰り返し食べて覚えている味は、王将の餃子か新福菜館の中華そばくらいなものである。

話が右旋左回するのは毎度のことなのでお許し願いたいが、和菓子屋さんの話に戻ろう。京都ではそれらが「上菓子屋」さんと「おまん屋さん」の二つに区別されているのをご存知だろうか。江戸幕府は、「上菓子司」の店を全国248軒に限定し、京都の皇室御用達の店を28軒に絞ったという。「虎屋」はいうに及ばず「亀屋ナントカ」とか「鶴屋カントカ」は、茶道家元、寺社からの注文でお菓子を作る店であったようである。

試しに、イノダ本店近くの堺町通三条上ルの「亀屋則克」の暖簾を潜ってみて欲しい。ここも「上菓子司」である。「お菓子司」と店名が書かれた紺の暖簾がかかるだけの目立たない店構えで、店内に入ると土間に接客とお帳場を兼ねた畳敷の四畳半しかない。サンプルもショーケースもない。店内で「なににしまひょ。」と問われたら事前調査していない観光客は冷汗が出るに違いない。

一方、出町柳の「出町ふたば」や河原町の「永楽屋」、五条烏丸の「今西軒」など、豆餅(豆大福)、おはぎ、桜餅など普段づかいの和菓子を扱う店は「おまんやさん」と呼ばれて毎日の生活に溶け込んでいるのである。まあ、「ふたば」や「今西軒」は観光客にも人気が出てきて行列が長くなり、近所の方はなかなか買いに行けない状態ではある。観光客の一人としてお詫びしたい。

振り返れば、ある京都地図に掲載の寺社仏閣高楼庭園史跡墳墓を全数踏破する目標を立てて、徘徊逍遥するうちに、京都銘菓もついでに賞味する機会が多々あった。こうなると和菓子屋さんも全数制覇したくなってきたのである。

なお、ここで耳寄りな情報、「出町ふたば」の暖簾分け「七条ふたば」という店が、本家と同じ材料、製法で豆餅(豆大福)を作っている。西本願寺の南、水族館の北東という少し不便な場所だが、包装紙も本家と同じデザインなのでお試し頂きたい。包装紙に印刷されている所番地と電話番号に気づかれなければあの「ふたば」で買ってきたといばれるのである。京都駅から徒歩10分はかからないので、新幹線に乗る時刻を少し遅らせれば、出町柳まで遠征したのと同じ御利益(ごりやく)が得られるのである。

さて、そろそろ夏越の祓えで「水無月」を食べる日が近づいてきた。皆さんはどこの「おまんやさん」でお買い求めになるのだろうか。

タナキン

北山ユース開所366日目から宿泊して、皆さまに育てられた大昔のホステラーです。 京都の寺社仏閣の全数踏破を終え、次に季節毎の拝観を実施中。

8件のコメント

  1. 旅には発見する喜びというものがあります。
    出町ふたばの暖簾分け「七条店」を本文でご紹介しましたが、やはり暖簾分けで「いなりふたば」の存在を知りました。京阪本線の伏見稲荷駅のちょうど東側にありますが、そこからだと南進して高瀬川を渡り、伏見稲荷の方角と逆に50mほど北進しなければなりませんが、少しの回り道で美味い豆大福を賞味できるのであればよろしいのではないでしょうか。
    https://tabelog.com/kyoto/A2601/A260601/26007559/

  2. 以下は、「岩波写真文庫 京都案内 洛中編」からの受け売りである。

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    御所近くの「上菓子屋」は大変格式を重じていて、お菓子を求める時に「売ってくれ」などと言うと叱られたそうである。「チマキ残ってましたら、分けて頂けまへんか。」と謙(へりくだ)らないといけない。
    御所上納の残り物を、人民がいただくのである。大正時代まではそういう気風があったそうである。

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  3. 歳末の多忙なみぎり、恐縮でございます。
    本文中の「日本最古のお菓子 亀屋清水 清浄歓喜団」がなんと横浜高島屋で販売されておりました。大抵の百貨店では全国の銘菓を集めたコーナーがございますが、そこの入荷ご案内に「毎月20日入荷」とあるのを発見しました。

    少なくとも全国の高島屋には入荷すると思いますので、お試しください。なお、「何事も体験だ」という気持ちでお食べになることをお勧めします。

  4. ふたばの豆餅は 京都高島屋の地下で買うことが多いです。以前 週に一度(?)新幹線構内の売店に並んでましたけど 最近どうなんだろ。

  5. 2020年3月11日の京都新聞に気になる記事があったので、引用する。

    「創業360年、御用菓子の和菓子店が閉店へ 上皇后さまお気に入り汐美饅頭、「情けない」と眠れず」

    「創業360年で、滋賀県内でも有数の歴史を誇る大津市中央3丁目の和菓子店「藤屋内匠(たくみ)」が今月末で閉店することになった。江戸期から大津を代表する菓子の老舗として愛されてきたが、店主が79歳と高齢で後継者もなく、断腸の思いでのれんを下ろす。」

    「藤屋内匠は1661(寛文元)年、現在の場所で創業。京都御所に献上し、膳所藩や石山寺などに御用菓子を納めてきた。米飴(こめあめ)を練り込んだあんを包んだ「汐美(しおみ)饅頭(まんじゅう)」や、近江八景をかたどった落雁(らくがん)などが江戸期以来の看板商品だ。」

    記事によると、2000年代に入り、婚礼の引き菓子に和菓子が使われなくなり大きく売上が減少したようである。そういえば昭和三十年代、子供の頃の婚礼の引出物は、鯛の塩焼き、赤飯、そして布袋さん恵比寿さんや松竹梅を象った羊羹なんかが折りに詰められていたことを思い出した。

    和菓子には日本茶が合う。お濃茶、薄茶、煎茶、抹茶、焙じ茶などなどであるが、多くの日本人はお茶を煎れて飲むことを忘れてしまった感がある。加えて珈琲に関わる器具は家庭に増えている気がする。ちなみに、私の子供たちの家には急須がない。最寄り駅の近くにあった和菓子屋は全滅、隣の駅の和菓子屋は二軒残っているが、「カフェオレ大福」が有名というのが悲しい。

  6. 同日の連続投稿ですみません。新宿高島屋百貨店では毎月、京都の名店から和菓子を限定数の取り寄せを「予約で販売」しております。京都の名店の一例として3月の取り寄せを列挙致しますので、ご参考まで。なお各地の高島屋でも同様の催しがあるようです。

    ①今西軒 おはぎ 2種入 3個入(粒2・こし1)・・・税込603円(予定)

    ②亀屋粟義 加茂みたらし団子 5本入・・・税込651円(予定)

    ③出町ふたば 名代豆餅 3個入・・・税込600円 (予定)

    ④美玉屋 黒蜜団子 5本入・・・税込540円(予定)

    ⑤笹屋春信 よもぎ餅 3個入 ・・・税込486円(予定)

    ⑥中村軒 麦代餅 3個入・・・・税込661円(予定)

    ⑦中村軒 桜餅 2個入・・・・税込461円(予定)

    ⑧鳴海餅本店 ナルミの赤飯 300g・・・税込648円(予定)

    ⑨鳴海餅本店 桜餅 3個入・・・税込486円(予定)

    加えて季節の生菓子が下記

    A. 緑 菴 季節の生菓子 3個入(3種各1個)・・・税込1,500円(予定)
    B. 甘楽花子 季節の生菓子 5個入(5種各1個)・・・税込2,500円(予定)
    C. 塩芳軒 季節の生菓子 4個入(4種各1個)・・・税込1,800円(予定)
    D.千本玉壽軒 草餅・桜餅 2個入 (各1個)・・・税込864円(予定)
    E.亀屋良長 うぐいす餅・桜餅 2個入 (各1個)・・・税込864円(予定)

    ★ご予約・お問い合わせ:新宿タカシマヤ 和菓子売場(銘菓百選コーナー)
    TEL(03)5361-1111(代表) 内線5825

  7. テレビ朝日系列「ぶらり京都歴史探訪」にて、幕末安政年間に幕府が「禁裏御用達」28店舗を定めたという話が出て参りました。塩芳軒のサイトを確認すると、「禁裏御用達」の仲間が「上菓子屋仲間」という団体を作り、維新による東京遷都で解散、その後にその流れを汲んで出来たのが、「菓匠會」だそうで、サイトがありますが、リンクが難しいので各自検索してアクセスしてみてください。

    そして「京華堂利保」は2022年1月に廃業。
     

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