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拝観と見物

Facebookに興味深い投稿を発見した。原文をそのまま引用することは憚られるので要約してみる。

「私が住職を務める寺は有名ではないが、紅葉の季節には隠れた名所でそれなりに賑わう。なおかつ拝観料を取らないことでも知られている。中にはトイレだけ借りて行く観光客もいる。紅葉の季節ともなると、落ち葉の清掃も毎日の大変な作業で、檀家さんのお手伝いもお願いして大ワラワです。」

拝観料を取るほどの有名な仏像や仏閣があるわけでなく、ただ紅葉が隠れた人気のお寺さんなので観光客はやってくるが、お金は落とさない。その観光客のために出費や労働が強いられているということである。

紅葉の季節には混雑を避けるため、始発バスを利用して遠方の寺社に行くことがある。ある朝バスを降り、ミヤコの鬼門方向にある赤山禅院に向かって歩みを進めていると早朝にも拘らず爆音が聞こえる。近付いてみると肩から下げたブロアーから出る大量の風で参道に落ちた紅葉の枯れ葉を吹き飛ばしているのである。鳥居から境内まで百メートルほどで、その半分以上が枯れ葉で覆われているのである。確かに竹箒ではくよりは楽であるに違いないが、肩掛け式の小さなブロアーでも時間がかかる作業である。ちなみに赤山禅院も拝観料は取らない。

さて、私事で恐縮だが半世紀近くも京都の寺社を巡っていると仏像の「見物」を断られた経験もある。実際には「拝見」という言葉を使ったのであるが、断られたのである。その場で機転をきかして「お参りをさせて下さい」と言い直すと、御住職は破顔して「お入りなさい」と許して下さったのであるが、時々思い返して、なかなか上手くいったものだと苦笑いすることがある。ただし、その寺の場所は覚えているが、寺の名前も忘れたし仏像のお名前も失念した。バチあたりなことである。

一体、私は京都のお寺を拝観(拝んで観る)するために歩いて来たのであろうか。それとも、ガイドブック巻末にある寺社仏閣のリストをコンプリートするために上洛していたのであろうか。賢明な読者各位におかれては、私は後者に属するミーハーで、一時流行ったアンノン族、今なら「そうだ京都行こう」の惹句に載せられて新幹線の客となる消費者の一人である事は間違いない。

なるほど、歳を重ねるとそれなりに知識も増え、お参りする寺社の開山の由縁や故事来歴、人物往来などを頭に入れた上で山門を潜ると受ける感銘もひとしおであるが、決して宗教心で参っているわけではない。桜や紅葉、仏閣、仏像、庭園などを眺めて前述のリストにチェックを入れるだけのことである。

また、私事で申し訳ないが私の家の葬式と法事は曹洞宗である。初めて曹洞宗であることを知ったのは生家で祖父が亡くなり、そこにいらしたのが曹洞宗のお坊さんだったからである。曹洞宗の葬式はドラをジャラン、ジャランと賑やかに鳴らしながら読経するので、不謹慎にも笑いをこらえるのが大変であった。そもそも曹洞宗は、道元禅師が当時は宋であった支那に渡り持ち帰ったもので、宗派を名乗ることを禁じ、大伽藍の仏閣を建てることも嫌い、ただただ座禅をする教義であった。それが今では、福井県の永平寺と神奈川県の総持寺という大本山を二つ持つ日本最大の仏教宗派で、駒沢大学、東北福祉大学、愛知学院大学、鶴見大学の系列大学を持つに至っている。

開祖の思いに反して、曹洞宗の継承者は大伽藍を建て、各地に寺院を開いた。開祖を慕って宋から本邦に渡って来た一番弟子の「寂円」は山奥に「宝慶寺」を建て座禅三昧の日々を過ごしたが、今は寂れていてその寺は永平寺の管理となっている。実は曹洞宗そのものも四代目本山住職の時にスポンサーの勢いがなくなって潰れかけたことがある。何しろ信者(とお布施)がないと宗教も広まらないのである。(言い換えると人を救えないのである。)

人が生きて活動していくにはお金がいる。肉食妻帯しないと寺が続いていかない。昔から真宗だけは妻帯が許されていたが、どうやらアジア圏で僧侶が妻帯しているのは日本だけらしい。「不許葷酒入山門(葷酒山門に入るを許さず)」の石柱が禅寺の入り口にあるが、お酒を「般若湯」と言い換えて愛でることは誰でも知っている。「葷」は臭いのある食べ物のことであるが、坊さんでも納豆にネギは入れたいものである。また、葬式仏教という言葉があるが庶民にとってはやはり戒名は欲しいし、引導も渡して欲しい。お金が解決してくれることは多いし、俗にまみれないと宗教活動は維持できないのである。今のはやり言葉でいうとコンプライアンスやガバナンス違反ということになるが、日本人は融通無碍が得意なのである。

話はフリダシに戻って、Facebookの投稿にある「拝観料の取れないお寺の投稿」の件である。私は、「入場料」を取りなさいと回答しておいたが、いかがなものであろうか。

タナキン

北山ユース開所366日目から宿泊して、皆さまに育てられた大昔のホステラーです。 京都の寺社仏閣の全数踏破を終え、次に季節毎の拝観を実施中。

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