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船岡温泉

私が昭和51年(1976年)発行の平凡社版ポケット地図京都にリストアップされた寺社仏閣と名所旧跡をしらみつぶしに訪ねていることは耳タコであろうが、船岡温泉はそのリストに入っていない。しかし、歴史的構造物であるので、小雨の降る寒い季節に門を潜ってみた。

大徳寺を南に抜けて、北大路を渡り、船岡山の東麓を過ぎ、古い商店街に突き当たると商店街に似合わない茂みと看板が見える。近づくと、巨岩を並べて塀として、その上に植え込みがある。見越しの松と大きなムクリのある玄関屋根が大きな特徴である。

そもそも船岡温泉が有名であるのは、大正12年(1923年)創業当時の威風を残し、歴史的な価値があるからである。何しろ平成15年(2003年)に国の登録文化財に指定されているのである。

大正12年といえば関東大震災の年であるが、1918年に終わった第一次世界大戦による好景気と、ドイツ敗戦による南太平洋の旧ドイツ領を引き継ぎ、また余り知られていないが欧米各国の要請により、東南アジア殖民地から欧州への航路の安全確保のために日本海軍が東南アジアやインド洋に派遣され国際社会の一員として認識された時期でもあった。また、自由な雰囲気の大正デモクラシーがまだ健在で、その気風が建物デザインに反映されているのである。誤解を恐れずに一言で表現すれば「バブリー」な時代であった。

脱衣場のけやきの格天井の真ん中に天狗と牛若丸のレリーフが飾ってある。格天井の枠をはみ出して天狗の手や羽根がデザインされているのは、領地を拡大しつつある日本の当時の世相を反映しているのではないだろうか。ただ、デザインや作りに美術的価値のあるようには思えない。

そして脱衣場を囲む欄間には、葵祭、賀茂の競馬、今宮神社の祭礼などが描かれていて、実に京都らしい。そして、番台の近くの欄間には「爆弾三勇士」の彫刻があるが、ネットやガイドブックにはあまり記載されていないので、敢えて特筆しておく。

「爆弾三勇士」は1933年に支那事変で、敵の鉄条網を破壊するために、点火した爆弾を三人で抱えて突撃し、爆弾もろとも散華した三兵士のことで、歌舞伎を含む芝居、映画、浪曲、そして流行歌も出来るほど国民の話題になった事件であった。ちなみに、東山の大谷本廟に「肉弾三勇士」の墓がある。

大東亜戦争の敗戦後に、我が国では戦争に関する言論表現の忌避の風が生まれ、「爆弾三勇士」さえ忘れ去られているのは実に嘆かわしいことである。硫黄島に星条旗を立てる兵士の姿は日本人にもよく知られているが、細長い筒状の爆弾を三人の兵士が小脇に抱えて前進するモチーフが忘れ去られているのは如何なものか。

大抵の銭湯には、脱衣場に面して庭を配し、そこには濃い緑の常緑樹に囲まれた池があり、そこに錦鯉が泳いでいたものであるがここにも同じく緑と池があるが、気が付かないほど小さい。恐らく増築によって面積が失われていったのに違いない。

ただ、目をこらすと大原女の石像や裸婦像、石造りの欄干などそこかしこに興味をひくものがあるらしい。(実は大原女の像、裸婦像は見損ねた)

脱衣所から浴室へいく途中に、北山ユースにあった洗面所のように長いシンクの洗面所がある。ただ、壁が「マジョルカ風」といわれる極彩色のタイル貼りなので、少しばかり気分が浮かれてくる。

浴室に入ると、右から薬風呂、泡風呂、エスティージェット風呂、電気風呂と普通の風呂があって薬風呂以外はお湯がつながっている。ここの電気風呂は日本最初のものと言われていて、英語でも注意書きがある。

This bath is electric. Do not use if you have heart trouble.

私は、ハートにトラブルがあるので電気風呂は遠慮したが、料金の元をとらねばと全部の浴槽に出たり入ったりして、少しばかりのぼせてしまった。

家庭の浴槽は容量が120リットルから200リットルで、そこに50から60リットルほどの人間が入る。入浴する人の体温が湯温より低く、そのためお湯が冷めてしまうのであるが、大浴槽の場合、冷めた湯は対流によって流れ去り、高温の湯が次から次へと供給されるので短時間で身体が温まるのである。

また、浴室の奥には少しぬるめの浴槽が別にあるので、体温調節に役立つ。

そして、外には完全な水風呂とぬるめの湯の露天風呂がある。この水風呂はさらに奥のサウナで使うらしい。

洗い場の椅子の高さがとても低くて常連客は25センチ角の小型お風呂マットを持参して椅子の上に乗せて使っている。椅子が低い理由は今後の調査課題である。

なお、つたない文章ではその全容を把握しがたいと思うので、参考となるウエブサイトのURLを貼っておく。

http://funaokaonsen.net/dish.html

https://eonet.jp/travel/chousa/160405/

タナキン

北山ユース開所366日目から宿泊して、皆さまに育てられた大昔のホステラーです。 京都の寺社仏閣の全数踏破を終え、次に季節毎の拝観を実施中。

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