Sorry. Our site is only Japanese!
Not accessible from overseas!


Home > > 京都 > 錦市場

錦市場

旅先では、その土地の市場を歩く楽しみがある。輪島や千葉の勝浦の朝市のような露店も面白いが、地元民の生活がしのばれる常設の市場の方が興味深いのである。例えば金沢の近江町市場や大阪の黒門市場などが楽しい。また、名古屋も名駅から徒歩圏内に市場があるし、地下鉄を使って少し離れた名古屋の新市場へも足を伸ばした記憶がある。

さて一時期、職場が往時の築地市場の徒歩圏内にあったので、すこぶる楽しい思いをさせてもらった。買い出しのプロを相手に、朝食として寿司だけでなくカレーやトンカツからピザまで揃っていたのである。なお、あまり知られていないが、築地市場には青物つまり野菜の市場もあったので、全国から集まる珍しい野菜も季節ごとに目にすることができた。

そして、京都の市場といえば、錦市場である。以前に錦市場の八百屋の店主でもあった伊藤若冲について投稿したが、古い洛中図絵に魚町が描かれていたというから歴史もある。詳しく書くと、東魚屋町、中魚屋町、西魚屋町があったという。

地図を眺めると、錦の通りを囲むように中魚町、八百屋町、瀬戸屋町、貝屋町、蛸屋町という町名が現存している。それに比較すると築地市場は大正の大震災で日本橋から移転してきて、令和の時代に豊洲に行ってしまったのだから僅か83年の歴史しか残さず、儚いものである。

話題が飛ぶようだが、仲間とグラタンを初めて食べたのはいつだったとか、初めてコカコーラを飲んだのはいつだったかという話をした。我々が育ってきた戦後の昭和時代に、刻々と食生活が変わっていったのである。錦市場は魚の市場として始まり、伊藤若冲の実家がそうであったように野菜も扱うようになり、乾物、豆腐、練り物、漬け物や玉子焼きなどの惣菜も店頭に並び出した。うどんなど軽食を供する店もある。寿司屋も増えた。つまりは、扱う商品も世につれて変わってきたのである。

なお、琵琶湖で獲れた「琵琶湖八珍」と呼ばれるゴリ、モロコなどの淡水魚、周囲の河川から来た川魚、そして若狭から運んできた鯖やぐじは錦市場ならではの売り物であろう。当然ながら、お寺さんが多いことから湯葉、麩、豆腐と大豆由来の飛竜頭(がんもどき)の店も多い。

半世紀も錦市場を歩いていると、飲食店が増えていることと、昔からある店であっても立ち食いの食品の提供が増えていることに気が付く。有名な三木鶏卵を例に取ると、出汁巻きタマゴを串に刺して売るようになった。卵の黄身を強調したカスタードクリームパンや黄身アンパンを売り出した。ふらふらと歩く観光客がこの有名店の出汁巻きタマゴを知っていても、一人で食べきれる量ではないことから手が出ない。それを食べ歩き出来る量を串に刺して売ることで手軽に買えるようにしたのである。

串団子は当然ながら串に刺した焼き魚やミニトマト、胡瓜漬け、カップ入りのタコ刺しなんていうのもある。河豚の唐揚げ、鱧の照焼き、蟹爪まで立ち食い用に並んでいるのである。

一応、錦市場では食べ歩きは禁止されていて、購入した店の奥や店の前で食べるという規則になっていて、椅子やテーブルを備えている店もあるが、店の外つまり通路で食べる客もある。大体にして、食事を立ったままするとか、歩きながら食べるというのは礼儀に敵っていない。これは1970年にマクドナルドが日本にやってきて広まった悪弊であるが、食も含めた文化も変化していくので「悪弊」などというのは老人の愚痴に過ぎないのである。

さて、錦市場の道は東西に走っているが、南北に走る道について語ろう。錦の天神さんを背中にして錦の通りを眺めると、有名な鳥居が見える。鳥居の横木が、道の両端にある店の二階にめり込んでいるのである。ブラタモリで紹介されたこともあり、少しばかり有名な話なのでご存知の方も多いと思うが、寺町京極から東側は、お寺や神社の境内であったのだ。言い換えると新京極通は寺社の境内であり、明治の中期に作られた比較的新しい道であったのだ。

つまり、錦市場の東の端は寺町京極からで、そこから東は百年前まではお寺か神社の境内であったということになる。そして、西の端は高倉通りで、これは昔のままである。その高倉通の角地に伊藤若冲生家跡の看板がある、有り難いことにGoogleマップでこの錦市場の通りを左右の店を眺めながらパソコンの画面を通して歩き抜けることが出来る。

ただし、このストリートビューの撮影は2018年10月、誰もマスクをしていない頃の風景である。四条河原町近くの河原町通りや四条通は最近の写真が記載されているが、錦市場の最近の写真を載せても価値がないので四年前のままにしてあるのに違いない。恐らく今は閑古鳥が鳴いている状態であろう。早く、あの頃の賑わいを取り戻してもらいたいものである。

タナキン

北山ユース開所366日目から宿泊して、皆さまに育てられた大昔のホステラーです。 京都の寺社仏閣の全数踏破を終え、次に季節毎の拝観を実施中。

2件のコメント

  1. ビルにめり込んでる 錦天満宮の鳥居ですけど 内側の部屋に 飛び出してるんですよね。昔 そこが 喫茶店だったことがあって 目の前に 鳥居の端が 飛び出してる席で コーヒー飲みました。写真撮らせてもらったんだけど 行方不明。残念。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です