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京都大原の秘密話

JR東海は東海道新幹線を運営しているので、国鉄が1987年4月に民営分割化された旅客鉄道会社6社のうちで一番業績のよい企業である。今や16両編成1,323席の東海道新幹線は三分おきに東京駅を発車しており、その往来頻度は大都市の通勤電車並みであるが、いつも満員で走っているわけではない。

特に冬の時期は寒いので、旅行客は減る。つまり収入が減るのである。そこで色々な販売促進活動を行う。「シンデレラ・エクスプレス」のキャンペーンで毎年流された山下達郎の「クリスマスイブ」の曲と若い女優が演じる情景はバブル時代の象徴であった。 

https://www.youtube.com/watch?v=zK_eX4Oe5kA

また、「京都冬の旅」も冬枯れの京都になんとか観光客を呼び込もうと作られたキャンペーンであり、これは今もなお継続中で、非公開寺院、秘仏が期間限定(冬だけ)で拝観できる機会を与えてくれているのである。

「そうだ京都行こう」も、今なお続いているキャンペーンであり、スタートした当初は会員になるとガイドブックを兼ねた手帳が配られ、京都駅新幹線構内の特別コーナーには京都内の地域別の地図が無料で置かれていた。その地図には二つのチェックポイントが記されている。例えば「○○寺の手水桶に口から水を落とす動物は何か」とか、「○○神社本殿の軒天井に描かれている絵は」などと現地に行かねば判らないクイズがあり、その答えを郵送してポイントが貯まると一澤帆布のバッグなどがもれなく送られてくるというバブル時代を象徴するような景品があった。当然、私はその「そうだ京都いこう」クラブの課題を全数制覇したが、バブルが弾けて景品がだんだんとしょっぱくなってきたことを記憶している。

さて、京都駅で配布される地図のひとつに「大原」があった。課題は、大原の音無しの滝まで行かないと回答できないものである。今や質問も回答も忘れてしまったが、とにかくその滝まで行ったことは確かである。ただただ答えを得るために大原まで出かけるのは片腹痛いので、来迎院で日曜の朝だけ行われる「声明(しょうみょう)」を拝聴しようと考えたのである。

「声明」とはお念仏を音楽の曲のように唱えるもので、音階もあって日本の伝統音楽の源とも言われている。「ドレミ」はイタリア語の音階であるが、古い和式では各音階は漢字二文字で表され、夫々が陰と陽に分類、陰が「呂」であり陽が「律」となる。実は大原はかつて「声明」の中心地であった。米国でいえばカントリーミュージックのナッシュビル、クラッシック音楽ならウィーンという音楽の都でもあったのである。

さて、大原のバス停留所から三千院を目指す坂道に沿って小川が流れていることは京都好きの皆様はご記憶にあるだろうし、その三千院から実光院、勝林院、宝泉院に行くには小さな赤い橋を渡ることになる。つまり、京都大原三千院の南側と北側に川が流れ、それが合流して高野川に落ちていくのである。そして、その川の名前は前述の音階(または陰陽)に合わせて、三千院の北側を律川、南側を呂川と名前が付けられているのである。

既にご承知の方も多いと思うが、「ろれつが回らない」というのはこの「声明」がうまく唱えられない。つまり、「呂」と「律」の音階を正しく詠えないというところから来ている。お坊さんが唱えるお念仏は「おりん」に木魚と鐘、曹洞宗ではジャランと鳴らすシンバルのような妙鉢を使うが、来迎院には木琴ならぬ石琴がある。細長く薄い石を並べて親指の先ほどの頭がついたバチで叩くのである。(調べると、拍子木のような音木、太鼓なども使われています。)

割と早起きして早めに到着したにも拘わらず来迎院の声明のお堂は満員に近い状態であった。信心深いのか物見高いのかは判らぬが、日曜の朝に京都の北の外れに数十名が早起きして集合しているのである。私は入り口の扉の近くにやっと腰を下ろした。すると暫しの間を空けて「導師入場」とは言わず、無言でお坊様がお堂に入場され、その声明とやらが始まった。お念仏、お経であるので意味不明、それが当然ながら長々と続くのである。お通夜の場合は、参列者の人数に合わせて般若心経を繰り返すのが常であるので、なんとなくお経のリフレインを楽しめるが、この時は苦行であった。

そっと周囲を推し量ると、膝で後ずさりして堂の外に逃げていくバチ当たりな不信心者が居るのに気が付いた。そして、とうとう私も苦行のお堂から撤収したのである。その後、仏罰が私に下ったようには思えないのであるが、ヒトサマに話すようなことではないので数十年間黙っていたのである。

タナキン

北山ユース開所366日目から宿泊して、皆さまに育てられた大昔のホステラーです。 京都の寺社仏閣の全数踏破を終え、次に季節毎の拝観を実施中。

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