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京都迎賓館

たなきんです。日本放送協会で京都迎賓館を取り上げた番組の再放送にインスパイアされて一筆湿らせてみましたので、ご笑覧下さい。

府立医大病院の方から京都御苑に入り、お馴染みの自転車が通る砂利の細道を辿っていると、向こうからパトカーがやってきた。砂利の上をパトカーが走ることは珍しいことである。向こう側がこちら側を不審者と診たのか私の横で止まる。私の方から「何があるのですか。」と切り出すと、中の警官は「実は近いうちに外国の要人がおみえです。」と何故か控えめに答えてくれた。

外国からの要人をもてなすのは、東京の四谷駅前にある迎賓館が使われることが多い。しかし、ここは明治の鹿鳴館同様に西洋に追いつけ追い越せの時代にベルサイユ宮殿を模して建築され、供されるのもフランス料理である。いつまでも西洋の模倣で良いのか。日本には日本の建築様式があり、内装、調度品、作庭、そして和食の伝統がある。そんな思いと、京都人に日本の都たる矜恃を見せようと企画されたのが京都迎賓館である。

なるほど、京都迎賓館は平成17年の竣工であり、明治創業の店でも新参者扱いする京都で、この新しさは見物する価値はあるのだろうか。京都御所、桂離宮、修学院離宮とこの迎賓館は宮内庁の管轄で、数年前から往復葉書やネットでの拝観予約に加えて当日受付も人数限定で枠がある。(この原稿作成時は、例の流行病のため公開に制限があります。詳しくは文末のサイトをご参照下さい)

皆さんが京都を度々訪れる理由はいくつも挙げられると思うが、建築、絵画、料理など古き佳き日本の伝統を愛でる機会を求めて上洛される方が多いのではないだろうか。その日本文化に触れる訪問先の候補に京都迎賓館を加えて欲しいのである。

私は当日受付が開始された年にここを訪ねた。早い者勝ちなので、新横浜駅始発の新幹線で朝8時に京都駅に降り立ち、そのまま地下鉄で丸太町駅まで行き受付を済ませた。手続きの仔細は省くが、お米の通帳、印鑑も健康保険証も要らず、簡単に入ることができる。

門を潜り建物を望むと全てが平屋造りで究極のバリアフリーである。車止めの張り出し屋根の軒下から夏は冷房の風が、冬は温風が吹き出る仕組みがある。玄関の扉は樹齢七百年の欅の一枚板である。七宝作りの引手に手を掛けて開くとエントランスロビーには、金屏風を背に豪華な生花を生けた大きな花車が置いてあり、息を呑むのだ。内部の生花はトイレの洗面台の上まで京都三十四流派の宗家が持ち回りで担当しているとのこと。

玄関で靴を脱ぎ、下足番が札を渡すという仕組みは残念なことになく、土足で廊下を歩くのであるが、その床板にも欅の板を使い、傷がつきにくい加工を施している。そしてカーテンは使わず、遮光には全て障子を用いている。その障子を滑らせて一箇所に集めて障子の立板を眺めると木目が全て合っている。木目を合わせるというのが日本文化の粋(すい)である。

日本建築では襖、障子、畳は鯨尺(尺貫法)、つまり一間(1.82m)を基本寸法としているが、それでは背の高い外国人が頭を打つことが想像されるので、障子の高さは2mにしてある。建物は中央の庭と池を挟んコの字にできていて、どの部屋からも庭を愛でることができるが、掘り炬燵スタイルの座敷に腰を据えて縦2mの枠で庭を眺めると間が抜けてしまう。そこで軒を下げて御簾を垂らして縦方向の画角を誂えているのである。なお、コの字の建物の開いている空間は高台寺や平安神宮の渡り廊下を模して、池の上を渡してある。

その池の上の渡り廊下から手を叩き鯉を集め、餌をやるのが要人のお楽しみ行事の一つである。また、池には一艘の和船が浮かべてあり、ネパール国王殿下が王妃殿下と訪問された時に初乗りを楽しまれた。一般庶民はその船に乗ることは難しいだろうが、せめて渡り廊下の天井に映る池の波の反射光を楽しんで欲しい。

さて、一年に一日だけこの迎賓館の建設、装飾品、調度品などに関わった業者が一堂に会する日がある。彼らは、作ったものの歳月による馴染みやヨレ、擦り減りなどを確認し、手を加えることがあれば申し出るのである。中には既に他界された人間国宝の作品もある。そこはそれ一子相伝や京都のネットワークで伝統は受け継がれているのである。

私は個人的に、祇園祭の山鉾の中でデザインに一番親しみがあるのは菊水鉾である。蛤御門の変で焼けた鉾を復活させたのは昭和の名工と呼ばれた方々であり、昭和生まれの私はその同時代の空気を感じるのである。放火鉾は挽いたことがあるし、大船鉾は組立と解体を全部観た。山鉾の見物は新町の角近くなので菊水鉾は拝む機会が殆どないのだが、四条通りから少し望むだけで何故か安堵するのである。

さて、京都迎賓館である。平成の作で伝統を維持しながらもモダンな感覚を取り入れ、我々の孫の世代になれば、江戸時代の建物と区別がつかなくなるかも知れない。何しろ、令和の時代になると新聞折込広告のマンションの間取り図には床の間、書院、障子や襖どころか畳の部屋は皆無なのである。京都迎賓館は、少なくとも平成の時代の京都の伝統芸をそこに留め置くという役割を担っているのではないだろうか。私はそこに奈良東大寺の正倉院と同じ意図を感じるのである。

京都迎賓館のサイトはこちら

https://www.geihinkan.go.jp/kyoto/

タナキン

北山ユース開所366日目から宿泊して、皆さまに育てられた大昔のホステラーです。 京都の寺社仏閣の全数踏破を終え、次に季節毎の拝観を実施中。

5件のコメント

  1. 京都迎賓館、興味はありますね

    でも、流石?内閣府の所管施設、見学は有料、それもガイド付かなくても1,500円

    今はガイドツアーしか無いそうですが、それだと2,000円

    特別な?プレミアムツアーだと一人で5,000円

    宮内庁所管の京都御所・仙洞御所・桂離宮・修学院離宮は“無料”ですよね

    迎賓館建てるのに相当費用が掛かったのでしょうか?見学料は“受益者負担”なのでしょうか?

    失礼なこと書いて、すみません

     
    1. kabuさん、私が見物した時は無料だったか、忘れるくらい安い料金だったと思います。ガイドの有無も記憶にございませんが、御所、仙洞御所、桂離宮、修学院離宮はガイドが付いていたので、京都迎賓館も付いていたのではないかと思います。

      調べてみると京都迎賓館は「建設費240億円、年間運営6.8億円に対して利用実績は2015年4回(赤坂離宮6回)、その前2014年は7回ずつ」ということで入場料を取ったとしても焼石に水ですね。毎日の入場者数も百名に足らないので、ガイドなし¥1,500は空調・照明・トイレの水などの実費と考えられます。まあ、受益者負担に近いと思われます。(あれだけの広さの施設の電力料金は1日で数万円かかります。)

      まあ、京都の寺社仏閣の拝観料の相場は500〜600円なので、その相場に合わせると見物客が殺到して施設が荒れてしまう恐れがあります。入場料は相場の三倍くらいにして入場数制限もかけるのが妥当だと思います。

      以下は京都拝観料一覧です。
      http://aquadina.com/kyoto/guide/charge/

  2. 見学予約が必要だった頃 行きましたが 無料でした。

    今 有料で ガイドツアーなんて やってるんですね。

  3. たまたま、日本放送協会の2013年の番組で迎賓館を特集していて、YouTubeにありましたので、ご紹介します。

  4.  今更コメントというのも何ですが・・・
     2010年7月24日に行ってます。そねまんさんが

    見学予約が必要だった頃 行きましたが 無料でした

    というように(予約は傳兵衞さんがしてくださいました)無料だったと記憶しています。当日、免許証などの身分証明書が必要だったのですが、忘れてしまい焦りました。それでも本人だという確認をクレジットカード(他に本人という証しがありませんでしたので)で許してもらい入ることができました。

    行ったという証

    (管理人の特権で写真を挿入)

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