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皇服茶

このサイトの読者諸兄は、恐らく昭和の後半に高校生時代を過ごした方が多いと推察しますが、当時の高校では日本史も世界史も必修科目で、大学受験はそれに地理を加えた三強科からどれかひとつを選ぶ仕組みでした。つまり、成績の出来不出来は別にして、全員が世界史、日本史、地理を学んでいたのです。

しかし、現在の高校では世界史は必修ですが、なんと日本史と地理は選択科目で、どちらかひとつを選ぶ方式になっております。この件についてここで私の意見を開陳するわけではありませんが、自分の国の歴史を必修にしない教育はおかしいですね。なにはともあれ、私と同世代の日本史必修の皆様にとって教科書に出てくる源頼朝の像とか、大政奉還の二条城の大広間のイラストなどは全員が共有している記憶ではないでしょうか。

その共通記憶のひとつに、「空也上人像」があります。なんと開いた口から何体かの仏像が飛び出しているというまことにシュールなカタチは脳裏から離れません。仏像と書きましたが、あれは阿弥陀様で、念仏を唱えたら口から阿弥陀様が出てきたという言い伝えがあるそうです。

空也上人像
空也上人像(筆者撮影)
ある年の正月に六波羅蜜寺というところに参り、宝物館に足を踏み入れるとなんとそこに、日本史の教科書写真まんまの空也上人像があって、鼻から牛乳ならぬ口から阿弥陀様が出ていて、新年早々に度肝を抜かれたのでありました。いくら不勉強な人間でも、強烈な造形は覚えているものなのです。まあ、当日までその像の名前も覚えていなかったのは確かです。

空也上人像に大きな衝撃を受けて六波羅蜜寺の境内に戻ると、そこに緋毛氈を敷いた縁台が並んでいて、お茶を頂くことができます。所望すると、なにやら結んだ昆布と梅干しが茶碗の底に沈んでおり、由来を教えて貰いました。なんとこれも空也上人がらみで、京都に流行った疫病退散を願って、新たに仏像を建立し、お供えとして梅昆布茶を煎れた。その茶を時の天皇に献じ、さらに疫病に倒れた民にも供したところ、たちまち悪病退散という伝説があるそうです。

天皇陛下が服用したお茶ということで「皇服茶」と名付けて、無病息災の祈念を込めて正月の三が日に六波羅蜜寺に行くとありつくことが出来ます。タダで飲むのも憚られますので、縁起物の八つ手やら俵、打ち出の小槌、瓢箪、などを付けた稲穂の飾り物を買わざるを得ない気持ちになって参ります。なお、飾り物は全てがオプションで、当然ながら個別に価格設定があります。飾り物はたった一つではさみしいので、複数個を購入することになり、新年の散財初めとなります。

さて、「皇服茶」は「おうぶくちゃ」と読みますが、ややこしいことに京都では年末年始に飲む季節限定の玄米茶を「大福茶」(おおぶくちゃ)と名付けて各茶舗が売り出します。この大福茶は皇服茶に因んで、一般庶民が飲むようにできているらしいのであります。寺町の一保堂だと200グラムで税込み1,080円。一回に10グラムを使い、三番煎じまで飲むことが出来ます。熱湯で煎れる分、お煎茶より香りが高く、洋風の食事にもあうような気が致します。なお、普通使いには昆布や梅干しをいれたりしません。

また、北野天満宮では「大福梅」を販売していて、この梅はお茶か白湯に落として飲むと病いは、たたちまち癒えてしまうそうであります。

昨年末、横浜高島屋百貨店の地下に出店している一保堂でこの大福茶を買い求め、正月元旦から毎日飲み、結び昆布の代わりに丸太町の松前屋で求めた一番安い塩昆布を舐めると、その昔に空也上人の像を初めて拝見した時の衝撃を思い出すのであります。

タナキン

北山ユース開所366日目から宿泊して、皆さまに育てられた大昔のホステラーです。 京都の寺社仏閣の全数踏破を終え、次に季節毎の拝観を実施中。

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