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ラーメン

京都には、京都ならではの様々の伝説があって、それが正しいか否かに関わらず人口に膾炙しているのである。例えば人の家を訪れた時に「ぶぶ漬けでも」と言われたら、これは長居し過ぎというメッセージなので即刻退散しなければならないという話は有名である。また、京都人は京都中心主義で今でも日本の首都は京都であって、恐れ多くも陛下を始めとして宮様の皆様方は東京に長期出張しているという強弁をされている方もおられるようだ。更には中京区に住んでいないと本当の京都人とはいえず、「ほお、御土居の先ですかぁ。」とか、白川方面から来ると「それは、それは遠い所から。」などと言われ、田舎者扱いされる。そして、京都駅の南側から来たなどというと相手さえしてくれないかもしれない。

また、単位人口当たりのパンの消費量日本一が京都だということも結構知られており、消費量日本一が宇都宮、浜松、そして2020年上半期は九州の宮崎市とトップが入れ変わる餃子とは大違いである。(後で調べたら、今年の京都のパン消費は全国三位に落ちていた)何はともあれ、「進々堂」や「志津屋」の他にブーランジェリーが北山を初めとしてあちこちに開店し、更には四条大宮を下がったところにある「まるき製パン」や、東京の有楽町にまで出店している「京都祇園ボロニヤ」なんてものある。

さて、今回のお題は「ラーメン」である。一時期流行った「京風ラーメン」は、透明の醤油味スープで細麺、具に三つ葉や九条葱ならぬ分葱などを散らしていて、京都のはるか遠方からイマジネーションを豊かに発想した典型的な「京風」には、北山ユースに集っていた皆様も苦笑いしていたのではないか。ご存知のように、京都には薄味のラーメンなどないのである。例えば、「天下一品」のドロドロスープ、「新福菜館」の京都ブラックスープ、「ますたに」の背脂ギトギトスープなど、濃いスープのラーメンは枚挙にいとまがない。まあ、「餃子の王将」はラーメンのスープに一貫性がなく、度々変更しているし、「第一旭」はあっさり醤油味だが、これは例外。

私事で恐縮だが、上洛に深夜バスを使っていた時期があった。横浜を深夜に出て早朝に京都駅へ到着すると腹が減る。紅葉の時期や桜の時期も早朝の寒さが辛い。イノダコーヒ本店は朝7時から開いているが、朝食のセットは高額過ぎて手が出ない。そこで通うようになったのが京都駅から徒歩数分、「たかばし」の新福菜館である。とは言っても7時前に店の前に行くとシャッターが半分降りている。開店前の筈のそのシャッターを上げてもらって店内を眺めると、すでに満員に近いことが多い。ラーメンの客もいるが、肉皿に瓶ビールの姿もある。今から振り返ると夜勤明けの皆さんだったのだろうか。実は第一旭の開店は午前5時からなのでそちらへ行けば済むのだが、店のキャパや醸しだす雰囲気でメニューにビールはあっても第一旭では長居できない空気がある。

なお、「第一旭」の正式名称は「本家第一旭たかばし 本店」であり、道路を挟んだ向かい側にある「山本まんぼ」も含めてその土地の名前「たかばし」は正式な住居表示、所番地ではないのである。無粋な話だが、番地は「東小路向畑町」であって、市バスの停留所名は「塩小路高倉」である。なお、「山本まんぼ」は建物が取り壊され移転している。このラーメン2店舗付近だけに通用する地名があるというのが愉快である。店の前の竹田街道を南に百メートルほど行くと、JRの線路を陸橋で渡るので、この高架橋を「たかばし」と呼ぶ説があるが、それなら日本国中に「たかばし」の地名があってもよい筈である。なお、最近になって「たかばしラーメン」と名乗るラーメン屋が多店舗展開しているが、食べていないのでコメントできない。

ここでまた個人的な話に入る。私の生家の隣はそば屋であった。カレーライスもラーメンも出すいわゆる街のそば屋に幼少の頃から出入りして、粉から製麺、出汁の取り方まで眺めながら育ったのだ。地元の荻窪は「春木屋」「丸長」「丸信」「丸福」「三ちゃん」「漢珍亭」など有名店が櫛比、そして高校近くには「永福町大勝軒」があった。ということでラーメンマニアとしての私の経歴は、京都マニアとしての歴史より長いのである。振り返ってみると、某グルメ投稿サイトへの私のラーメン店投稿件数は年平均50店舗を超えている。であるので、ラーメンには少しばかり五月蝿いのである。

ここから、一つ一つのラーメン店を取り上げてコメントするのではない。何故、京都には濃いスープのラーメン屋が多いのかの歴史社会的推論考察の陳述を試みたいと思うのである。冒頭で京都のパンの消費事情について触れた。何故、パンがたくさん食べられるのか。何故、漬物の種類が豊富なのか。実は、パンと漬物の共通点は日頃の生活の中で京都人は食事に重きを置いていないという証なのである。京都の街を歩いていると丼物や麺類を出す小さな店によく出くわす。これは自宅で昼食を取らない人が多い証拠であり、パンは仕事しながら簡便に腹を満たすことができる。そして漬物があれば朝に炊いた残りのご飯さえあればさっさと昼飯にできるのである。

そして、ラーメンである。このスープが薄味であればライスを付けないと満足できない向きもおられるだろうが、濃厚なスープであるなら満腹感を得られるのである。「天一」のスープは常人なら飲むのを遠慮したいほどドロドロなので、完飲すると腹にどしんと来る。「新福菜館」のスープはブラックの色に驚くが意外に薄味なので、どうしてもヤキメシがお供になることが多い。「第一旭」は豚骨のあっさり醤油スープなのだが、敢えて湯切りを抑えて茹で汁をスープに混ぜているので、茹で汁に溶けた小麦粉が重湯のように腹に溜まるのである。

京都の街中を歩くと、ここが手工業の街でもあることに気が付く。西陣を持ち出すまでもなく、京都特有の御簾や法衣、数珠、そして扇子、唐傘なども市内で生産されており、任天堂も花札を作っていた頃は下京区の鴨川近くに本社を構えていた。ここ半世紀で清水焼の窯は山科に団地を作って移転してしまったが、西陣にはデザイン、染色、糸造り、機織り、仕立てなど、西陣のサイトによると16工程を経て西陣織りになるのだが、それらのほとんどが市内の手工業で生産されているのである。その職人は食事の時間も惜しんで仕事をしているに違いなく、食事は二の次になるのは当然である。

加えて、京都市は日本一の学生人口比率、なんと京都市民の1割が大学・短大に通っている計算なのである。学生さんは金がないけど、腹がへる。ちなみに出町柳にあった「餃子の王将」は、皿洗いを条件に無料で食事を摂ることができたくらいであるが、惜しくも2020年の秋に閉店になってしまった。背脂スープの「ますたに」は京都大学の下宿街の近くであり、今でこそ観光客で賑わうが半世紀前は学生が栄養を摂る場所であったに違いない。なお、今は間借りとか下宿なんてのは昔話で、学生専用マンションやアパートというのがあって隔世の感がある。なお、京大の吉田寮はかなり安価に宿泊(素泊まり)ができるので、どんな環境でも寝ることのできる方は試みに宿泊されると良いだろう。

脱線が過ぎた。まとめに入ろう。京都市内にラーメン屋が多く、そのスープが濃いのは安くて腹持ちが良い食事だからで、それを食べるのは自宅で手仕事をしている人たちと学生が多いからだというのが私の結論である。

しかし、叡電の修学院駅周辺にラーメン屋、それも人気店が次々にできていて活況なのは、まだ謎なのである。

特別付録 筆者が食べた京都のうまいラーメン屋一覧(順不同)
新福菜館本店
京都本家 第一旭
ますたに 今出川店
らぁ麺 藤七 とうひち
ラーメン大栄 本店
ラーメン藤 本店
篠田屋
極太清流らーめん
一番星
中華そば 萬福 京都駅前店
キラメキノトリ
石田食堂
麺や高倉二条
麺ビストロnakano
あかつき
天下一品総本店
新宿めんや風花本店
和醸良麺 すがり
タンポポ
麺屋 猪一
セアブラノ神 壬生本店
山崎麺二郎
麺屋 斑鳩
京都 龍旗信
中華そば 高安
四条にぼ次朗
新福菜館 河原町店
めん馬鹿一代
いいちよ
博多長浜ラーメン みよし

なお、餃子の王将、横綱ラーメン、中華のサカイ、餃子の珉珉はカウントしていない。
この文章を作成するに当たって多大な費用と歳月がかかっているので、決して単なる駄文と侮ってはいけないのである。たかばしの新福菜館ばかりリピートしているので個別の店の味のお問合せはお控えください。まあ、それぞれの店の味を覚えているわけはない。

タナキン

北山ユース開所366日目から宿泊して、皆さまに育てられた大昔のホステラーです。 京都の寺社仏閣の全数踏破を終え、次に季節毎の拝観を実施中。

2件のコメント

  1. 2021年10月19日に発表された「ミシュランガイド京都・大阪2022」でビブグルマンと評価された京都のラーメン店を書いておきます。ビブグルマンとは、ミシュランの星の評価とは別に彼らが軽食とカテゴライズした中で評価の高い店を言います。

    なお、ビブグルマンの定義も曖昧な点があり、ラーメン店がミシュランガイドに初めて掲載された当時は、全てがビブグルマンでしたが、今はミシュランの星付きの店もあります。また、醤油系のラーメンが多く選択されることからミシュランの評価員または評価方法に些かの偏りがあるという見方もあります。まあ、食べログの点数が「人為的」であることは識者の中では有名ですので、何でも参考として扱うのが宜しいと思います。

    ・2022年ミシュランガイド ビブグルマンのラーメン店

    らぁ麵 とうひち 北区

    拳ラーメン    丹波口

    麺屋猪一     仏光寺通り寺町下ル

    煮干しそば藍   御所の東側

    Vegan Ramen UZU KYOTO  一保堂近く

    鴨出汁中華そば ROKU 高島屋の裏 

    因みに、京都のミシュラン三つ星のレストランのURLもご紹介
    https://guide.michelin.com/jp/ja/kyoto-region/kyoto/restaurants/3-stars-michelin

     

  2. 2021年10月27日に022年ミシュランガイド ビブグルマンのラーメン店の一つである「麺屋猪一」へ行き、確認して参りました。別のサイトにも投稿しておりますが、ここにも貼っておきます。

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    店員さんに一番人気を伺って「出汁そば白」を頂く。「白」は出汁濃いめ、「黒」は醤油が勝っているそうな。 提供寸前に削ったばかりの花がつおの香りがグッとくる。濁りのないスープは煮立たないように注意深く炊いたに違いない。スープだけで勝負あったと言える。 素麺のような細い面はストレートだが、歯応えは時間経過してもしっかり残っている。麺に粒々が見えるのは全粒粉なのか。くどいがスープが主役で麺は助演俳優だ。 味変用の柚子やらとろろ昆布、黒七味に白胡椒も並んでいるが、どれも必要ないほどスープの魅力に吸い込まれてしまった。 京都ブラック、はたまた鶏のどろりスープが古都を席巻しているが、琥珀淡麗のスープは凄いぞ。

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