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天龍寺の雲龍図

たなきんです。いつものように長文です。

嵐山で一番大きな寺、嵐山の借景を得て曹源池を囲む庭園、さらには枝垂桜が見事であり、JR東海の「そうだ京都行こう」の宣伝動画には1993年、1994年、2002年、2016年と2018年に採用されたMUST GOの寺が臨済宗本山の天龍寺である。実は、天龍寺の建物は繰り返し焼失しており、現在の堂宇は明治の再建であり、日本で最初の史跡・特別名勝に指定されたのは方丈や法堂などではなく、庭園であった。

さて多くの観光客は、曹源池庭園だけを見物し、庫裏に上がることもなく、雲龍図で有名な法堂に入ることもない。それぞれが別料金になっていて、大抵の人は基本の庭園で満足してしまうのである。そして、私もその基本料金派のひとりで、両手とは言えないが数回以上は訪れているが今回初めて法堂に入り、雲龍図の説明を天龍寺の小川総長という偉いお坊さんに伺ったのでその一部を披露したい。

まず、法堂とは「はっとう」と読み、高僧が壇の上に立ち修行僧に向かって仏法講義をするお堂のことをいう。先月も特別公開された大徳寺の法堂を見物してきたのでその共通点から素人なりに構造を記してみる。床は瓦と同じような陶板を敷き詰めてあり、壁には修飾がなく、唯一教壇があるのみ。但し天井には雲龍図が描かれている。そして雲龍図で歴史が古いのは臨済宗本山の妙心寺である。明暦二年(1656)に狩野探幽作のもので、一般公開されているのでご覧頂きたい。そして現時点で一番新しい図は建仁寺の双龍図で平成十四年(2002)の作で、これも一般公開されている。

天井の龍は水神でもあるので火事を避ける意味もあるという説明は京都マニアなら御存知であろうが、天井の材料は何で、さらにあの大きな龍はどうやって描いたのであろうか。ローマやギリシアの聖堂にあるフレスコ画は生乾きの漆喰の上に水彩の顔料で描いているので、天井近くの絵はヤグラを組んで、その上に乗って画家が筆を取っているのである。しかし、ここの雲龍図は正方形の板をまず白く塗って背景として、そこに直接に墨で描いているのである。墨の濃淡だけで迫力ある龍が描かれるのはまさしく巨匠の技である。

龍は厚さ3センチ、百五十九枚の杉板に分割されて描かれているが、それをどうやって天井に固定しているのであろうか。接着剤は経年劣化で剥がれるし、釘で打ち付ければ第一に釘の頭が黒く見えるし錆が出るとそこから黒いにじみが広がる。正解は全部の板を吊り天井にしてあるのだ。そして背景となる白には下地の漆喰の上へ白土(はくど:白粘土)を塗り、腐食や虫食いを防いでいるという。そして中国の明の時代の墨と現代の墨を併せて使って描きあげている。唯一、筆を落とさなかったのは龍の両眼の白目の部分だけだという。

モノクロの龍を取り囲むように青色と白の大きな円が縁取られている。その直径は九メートルである。これは「一円相」と呼び、禅の悟りを表し、真理、宇宙なども表現されている。どこにもカドがない形こそが拘われのない心を表しているとも云われている。まあ、龍が暴れて逃げ出さないように結界を張っているという説もあるが定かではない。そして円は退色のない岩絵の具で描かれている。

さて、龍は架空の動物であるが決まり事があって九つの動物の特徴を備えて描かれている。まずは角は鹿、耳は牛の如しj、眼は兎の如く、顔は駱駝のように、爪は鷹の如く鋭く、手のひらは虎の如く、鱗は鯉、腹は螭、項(うなじ)は蛇のものに似せて描けという中国伝来の「三停九似説」に従って描かれている。「九似」はこれで説明したが、「三停」はここでは説明しない。現地でも解説はなかったので、ご興味のある方はChat-GPTなどに尋ねてみられたい。

次は龍の爪の本数の話をしよう。描かれる龍の爪の本数はその建物の格式によって定まっており、五本の爪の龍は中国の皇帝の印であり、皇帝の建物や調度品の彫刻や絵画の龍は全て五本の爪である。唐国の皇帝に遠慮しているのであろうか、朝鮮や台湾の龍は爪が4本であり、本邦の寺院においても天井に描かれた龍の爪の本数は2本か3本である。前述の妙心寺の龍は三本爪で、五本の爪の龍はここ天龍寺の加山又造の平成七年の作が本邦初ということである。そして建仁寺の龍も五本の爪を持っているのは何か考えさせるものがあるのである。

そろそろあしひきの山とりの尾のしだり尾の長々しき話に飽きてきた頃と思うので、本論に入ろう。この天井の龍が動くのである。八方睨みの虎とか龍の絵や屏風はあちこちにある。ここの龍もどこから観ても目が合ってしまう。さらに観察者が堂内を移動するにつれて龍の顔の向きが変わるのである。龍の顔の左目を見続けながら、視線を外さずに堂内の壁に沿って右から正面、そして右へと半円を描くように移動すると龍の顔の向きが移動に合わせて変化するのである。私が観てきたので間違いないのである。疑う方は是非とも追加料金を支払って法堂を拝観ください。

なお、雲龍図の撮影は禁止されているのでパンフレットの写真を撮影した。

下記は「そうだ京都行こう」の過去動画である。

https://www.youtube.com/watch?v=lVpq9eFDeqI

https://www.youtube.com/watch?v=TRrJnUt_XMk

https://www.youtube.com/watch?v=IfYDTLkpVIM

https://www.youtube.com/watch?v=qVq9bpabGcs

タナキン

北山ユース開所366日目から宿泊して、皆さまに育てられた大昔のホステラーです。 京都の寺社仏閣の全数踏破を終え、次に季節毎の拝観を実施中。

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